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CIRCLE OF DAYZ vol.3 Yosuke Aizawa

「DAYZ」と結びつきの強い人物や「DAYZ」が心惹かれる人物についてじっくり深掘りしていく「CIRCLE OF DAYZ」。第三回は、〈White Mountaineering〉のブランドディレクター、相澤陽介に話を訊いた。服作りや東京について。

感覚に頼らない、ロジカルな物作り。

——今回DAYZで〈White Mountaineering〉との取引が始まったということで、ブランドと相澤さん自身について改めてお話しをうかがえればと。

〈White Mountaineering〉は、2006年に立ち上げたブランドで、今年15年目。自分は以前〈COMME des GARÇONS〉という、どちらかといえばモードの世界にいたんですけど、僕の元々の趣味は、子供の頃からアウトドアで、キャンプや釣りがすごい好きだったんですよね。だから、それまでやってきた経験と自分の好きなことを融合させて新しい物を作りたい、と思って始めたブランドでした。

——〈White Mountaineering〉を始めるにあたってまず一番初めに作ったのはどんなアイテムでした?

今なら多分絶対無理だと思うんですけど、一番初めは、GORE-TEXの生地。前職の時もちょっと付き合いがあった担当の人がいたんでブランドの形もファイナンスも何もないのに、「これがないとブランドができないんです」ぐらいの気持ちで、ウールのツイードのGORE-TEXを作ってもらいました。2006年当時だと、モードの世界はエディ・スリマンとかトム・フォードとか、ロックでちょっとセクシーな男性像みたいな、イメージがキーワードの時代。でも、もっと僕らの目線でいくと裏原宿の次の世代というか、僕らの年齢の人がブランドをいっぱい始めた時期でもあったんですよね。

——メンノン、ブーン、クールトランスだったり、雑誌を見ていても、多くのストリートブランドが出てきた時代でした。

所謂同世代感のカルチャーを共有するというイメージでブランドを立ち上げるという感じが多かったと思います。ムードというか感覚的な部分でのコンセプトですね。でも自分はロジカルに物事を考えたいから「何となく良くない?」っていうのは今でも僕の中でタブー。人に説明が出来ないモノを作るのはなんとなく違うなと思っています。

——ファッションは感覚的に語られることが多いですよね。相澤さんはなぜロジカルな物作りに行き着いたんですか?

自分が作りたかったモノにすごく由来はしてると思っています。僕は美大生だったので、学生時代絵を描くでしょ、例えばジャクソンポロックみたいにアブストラクトさよりも、定規で引く様な線で作る方が合っていたんですよ。工程を正確に把握したくて、料理でも「このぐらいの調味料入れたな」とか、どのぐらいの分量だったら美味しいくなるのかを理解するのが好きなんです。ロジカルに物事を考えてしまうっていうのは、メリットであり、デメリットでもあるのかなとは自分で思いますけどね。わぁーっと勢いで騒げないっていうか(笑)。

——そんな相澤さんだからこそできる仕事があると思っていて、少し前だとクロネコヤマトのユニフォームデザイン、素晴らしかったです。

ああいう大きい仕事はもちろんコンペなんですけど、話を頂いて、これは絶対やりたいって思ったんですよね。本当に嬉しいのが、今日も自宅のある目黒から代官山まで来るまでに3人ぐらいすれ違ってるわけですよ。自分が作った服を着た人に15分間で3回会うって、そうそうないと思うんですよね。そういうことが北海道でも、沖縄でも起きるんですよ。

——どうやったら街の環境デザインに馴染むかを考えたとお話されていましたよね。

クロネコヤマトが一つのメッセージとして、誰からも違和感なく溶け込み、そして特別強いデザインでもないがメッセージは存在する。だけど街の中にフィットしている存在にし環境デザインとして成り立たせないといけない。ってプレゼンをしました。何で緑をキーポイントにするのかだったり、全てに意味があるんですよ。

——確かに、そういえば以前のユニフォームはベージュでしたね。

作業着ってベージュが多いんです。そこと同じ様な雰囲気では、何万人といる従業員がいる大企業のヤマト運輸のアイコンとしてふさわしくないし、実際のファンクションとして、あの色は汚れが目立ってしまう。そういうデメリットを調べたり、あとは世界中でどの企業が緑色をアイコンにしているかとか。例えばスターバックスもそうだし、スプライトもそう。カラーチャートを作って、どんな色が世の中に受け入れられているかを調べて、プレゼンしましたね。

——完全にロジカルですよね。

僕らは同世代間でカルチャーやファッションが好きであれば、ある程度の雰囲気で会話が成立するわけじゃないですか。共通言語があるから。でもヤマト運輸の役員とか実際に働く人、広告代理店の人は、ちゃんと説明をしないと理解してもらえない。「いや、なんかカッコよくないですか、このストライプ?」って言っても全然通用しないんですよね。それは自分に置き換えてみても同じなんです。僕はたまたま、運送会社で働いたことがあったので、少しは気持ちや動作性など理解して挑みましたが、実際に今働いているわけではないので、そちら側の意見については真摯に受け止め理解したいと思っていました。だから、自分が常日頃ずっと意識してきたロジカルシンキングを体現出来たのかなと思います。

渋谷は世代を超えて切磋琢磨できる街

——DAYZは、東京とカルチャーがキーワードになっています。今回〈White Mountaineering〉が入った事によってまたDAYZの見え方も変わってくるような気がしていて、楽しみです。

東京のストリートシーンみたいなところでいくと、僕あんまり友達作りが上手じゃなくて(笑)。昔から、一週間誰にも会わなくても全然平気なタイプ。今43歳なんだけど、とはいえ1995年とかヒップホップ創世記はものすごいBボーイでした。まだタワーレコードの池袋店でヒップホップの日本語のコーナーは一列しか無い様な時で、当時宇田川町でスティルデギンってお店をムロさんがやってて、高校生の時によく行ってたんですよ。初めてのGORE-TEXのジャケットもそこで買って。その後ムロさんに〈White Mountaineering〉のコレクションの曲とか作って貰ったりしましたね。

——そんな繋がりがあったんですね。

実はそうなんです。ブランドとして分かりやすくカルチャー色を出してないのは、あんまりそういうのが僕は得意ではないからなんですよ。ファッション・カルチャーリーダーとして、すごいカッコいい人がいっぱい居る中で、何か自分は違うなって思う所もあって。自分はモノ作りに入り込んでいって、美術大学に進みました。現代美術家に成りたいと思って絵を描いたりとか、立体作品を作ってみるとか、洋服作りはまだしてなかったんですが、この時期が自分のモノ作りの原点ですね。大学が八王子の山の中だから、当時の東京ストリートカルチャーを語れって言われると僕が知ってるのは高校3年間までってところですが(笑)。

——それでは、現在の相澤さんからは渋谷という場所はどう見えていますか?

僕は海外の仕事がすごく多くて、ロンドン、パリ、ミラノ、NYだったり、コロナ禍以前は月に1回どこかへ行かなきゃいけない事が多かったんですよ。世界の都市と比べても、東京の面白さはやっぱり、スピード感。渋谷って僕の中でカルチャーのアイコンだったわけですよ、高校生の時から。でも全く違うモノになっちゃったじゃないですか。今ウチの娘が中学二年生で、例えばアニメのお店に入って、僕らの中学生の時は絶対に無かったカフェで集まったりしてるんですよね。そういうのを見てても、東京は若い子が新しいカルチャーを作っていける可能性が世界で一番大きいんだと実感します。それがかっこいいかどうかはってのは、それぞれなんですけどね。やっぱり街が変わっていくっていうことは新しい循環を作っていく事じゃないですか。前の世代のフォーマットに乗らなくても、街が変わっていく、人が変わっていくって事によって表現の可能性は高くなると思います。

——そう考えると、若者にチャンスのある時代とも言えますね。

その街とその時代とジェネレーションの組み合わせで色んな物事が出来上がるのが、東京は面白いって思いますね。結局変わっていかないと新しいものが生まれる隙間って出てこないじゃないですか。だからもちろんダメなものは淘汰されていくし、それは僕らの世代もそう。実際に同世代で洋服を辞めてしまった人もいますしね。保守的になると新しい波に対して耐えられなくなるのかもしれません。そういう意味では若い人達と僕ら世代が切磋琢磨していく街ではあるかなと。

——最後になりますが今回、DAYZでTシャツのコラボレーションをして頂いて、次回はブランドの特徴がより出たモノをお願いしたいと思っています。

ちょうど、試作していて、レザーのシリーズは作ろうと考えています。アウトドアグッズを期待していてください。こうやってDAYZに商品を置いて、若い世代に受け入れてもらわないとですね。それは媚びる訳ではなくて、僕らはこういう考え方でやってるんだって伝えた上で、選んでもらえるように、若い世代に挑まなきゃいけない。そういういう意味でも、「俺らの世代だけで物事考えようぜ」っていうのは無い街だよね。渋谷は。

Interview : Yu Yamaki
Text & Edit : Shu Nissen
Photo : Ryutaro Izaki

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