CIRCLE OF DAYZ Vol.1 Masafumi Watanabe Part 1
2020.11.13 #INTERVIEW
「DAYZ」と結びつきの強い人物や「DAYZ」が心惹かれる人物についてじっくり深掘りしていく「CIRCLE OF DAYZ」。第1回は、東京のストリートシーンを牽引してきた〈BEDWIN & THE HEARTBREAKERS〉のディレクターで、「DAYZ」を作り上げた張本人でもある渡辺真史にインタビュー。前編では「DAYZ」を立ち上げたきっかけや、新たに始動したウェブメディア「DAYZ ARCHIVES」に懸ける想いについて語ってもらった。
20年来の仲間たちと、今この場所で店を始める理由。
——まずは「DAYZ」を始めたきっかけについてお聞きしたいです。こういうショップを作ろうという構想はいつ頃からあったんですか?
たしか3~4年前かな。〈BEDWIN & THE HEARTBREAKERS〉っていう自分のブランドを通じてアパレル事業に携わる中で、新しいセレクトショップを作ることに興味を持ち始めて。それとほぼ同時期に、ECが急成長している今の時代におけるリアルストアの意義についても考えるようになった。それで、新しいショップをオープンするために渋谷周辺の物件を探していたら「DAYZ」の隣にあるギャラリー「SAI」のオーナーから「MIYASHITA PARKで隣のテナントが空いてるけど、どう?」って提案されて。そこから一気に「DAYZ」のイメージを固めていったんだよね。
——「DAYZ」の舞台としてこの場所を選んだ決め手は何だったのでしょう。
東京のストリートが最盛期の頃は、簡単に見つけられないような場所でお店をやるのがかっこいいとされていて、僕も「ショッピングモールや駅ビルに出店して、誰でもいける店ってどうなんだろう」って考えてたんだけど。この数十年でファッションの流れも変化して、今はいろんな人がファッションに興味を持って自由に楽しめるようになってきたから、トラフィックの多い場所で意味のあることをやるのがベストなんじゃないかなって。宮下公園は渋谷と原宿を繋ぐ中間地点で、自分自身も若い頃からよく遊びに来ていた場所。そんなストーリーもふまえて、最新のスポットで東京の仲間たちと何か新しいことをやりたいって思ったんだ。
——たしかに、こういう大規模な商業施設の中に「DAYZ」のような空気感のショップがあるのはかなり珍しいですよね。
そうだよね。あえてこういう空間でオーセンティックなリテールの形を実現して、1990年代の渋谷・原宿を知ってる人はもちろん、当時を知らない人も来られるような場所にしたかった。店を訪れた人に東京のカルチャーやブランドの世界観をしっかり伝えたくて。
——「DAYZ」のコンセプトには”東京発世界行き”とありますが、海外へ向けた発信についてはどのように考えますか?
東京のブランドをセレクトしたショップって、実は東京にあまりないんだよね。海外から来た友達に「東京のブランドを見るにはどこへ行ったらいいんだ?」って聞かれても、一つにまとまっている場所がないからそれぞれのショップを案内することしかできなくて。〈BEAMS〉や〈UNITED ARROWS〉みたいなかっこいいセレクトショップはたくさんあるんだけど、明確に”東京”でセグメントしてるショップはきっとないんじゃないかな。だからこそ、東京でブランドをやっている僕みたいな人がそういう店をやったら面白くなるはずって思ったんだ。僕らがニューヨークへ行ったら現地のブランドをチェックするように、東京に来た人が東京のものに出会えるショップとして機能していけたらいいな。
——「DAYZ」のブランドロゴは〈FORTY PERCENT AGAINST RIGHTS〉、〈WTAPS〉そして〈DESCENDANT〉の西山徹さんがデザインし、ショップの内装は〈M&M CUSTOM PERFORMANCE〉が手がけました。この布陣はどうやって決まったんですか?
彼らは僕にとって尊敬できるクリエイターであり、仲間でもある。みんながそう呼ばれるのが好きかどうかはさておき、当時は”ファミリー”って称されることもあったくらい。それぞれが好きなことを続けながら歳を重ねて、ビジネスの面でも成長してきた今、改めてその人たちを集めて何かを作りたかったんだ。こうやって横の繋がりを大事にするのが僕らのスタイルだから。
——まさにオールスター的なメンバーですよね。
まずは自分にとってのオリジンな部分から始めたかったからこのチームでスタートしたんだけど、そこで完結するのではなく、次の世代に繋げていくのが大切だなと思ってるよ。これからハイブランドや若い世代のブランドを取り入れることで、多角的に東京を紹介していきたくて。東京の街がどんどん変わるように「DAYZ」もどんどん変わっていきたい。常に東京の今を発信して、地方や海外から来た人はもちろん、東京に住んでいる人にも僕らが好きなカルチャーを体験してもらうのが「DAYZ」の役割だと思うから。
“東京の今”を深掘りして、国内外へ発信したい
——「DAYZ」ではショップのほかにオンラインストア機能も兼ね揃えたウェブメディア「DAYZ ARCHIVES」もスタートしましたが、店とメディアの双方から情報を発信しようっていうのは当初から決まっていたんですか?
はじめは漠然としか考えていなかったんだけど、「MIYASHITA PARK」で店をやるって決まってから明確にイメージできるようになった気がする。今まで自分の頭の中にふわふわと浮かんでいたアイデアが、そこから徐々にまとまっていったというか。
——「DAYZ ARCHIVES」を始めるにあたり、どんなメディアを目指していきたいと考えていますか?
とにかく東京の情報がたくさん詰まった”東京の地方誌”を目指したい。このメディアを通じて東京という街をより深く知ることができて、その場所へ足を運びたくなるような。まさに”東京の歩き方”って感じかな(笑)。今日渋谷に行くから何か面白い場所がないか「DAYZ ARCHIVES」を見てみよう、原宿に新しいアートショーがあって、そのアーティストのインタビューを「DAYZ ARCHIVES」で読もう、みたいな使い方ができたら理想的だね。
——「ショップの内装とウェブサイトのデザインはそれぞれ少し違う雰囲気なんですね。
ショップは人と人が出会う場所だから、人の手の温もりを感じられる空間にしたかったんだ。昔からの気心知れた仲間にDIYの延長線上としてやってもらうことで、こういう商業施設の中でいい意味で”浮く”お店にできたんじゃないかな。一方で、ウェブメディアは一瞬で多くの情報にアクセスできる場所だから、ショップとは少し違うテンションにしたくて。デジタルアートを得意とする「YAR」のYOSHIROTTENに依頼して、デジタルならではのクールなデザインにしてもらった。もしかしたら「ショップとメディアの世界観がバラバラじゃん」って思う人もいるかもしれないけど、僕の中ではすべて一緒。箱が違うだけで、目指していることはまったく同じ。
——世界のトレンドを発信している日本のファッションメディアはたくさんありますが、東京に特化したものは珍しいように感じます。
なかなかコアだよね。でも、東京はこの街だけでメディアが作れてしまうほどたくさんのコンテンツが詰まった場所だし、いくら掘っても掘り切れないほどの魅力がある。東京で起こっていることを自分達ローカルがリアルに発信していくことに意味を求めたくて。そういう信頼感のあるルートを作っていけたらなと思ってるんだ。
PROFILE
渡辺真史(MASAFUMI WATANABE)
1971年、東京都生まれ。雑誌のモデルからキャリアをスタートし、渡英後、ストリートブランドで経験を積んだのち、自身の会社「DLX」を設立。2004年に〈BEDWIN & THE HEARTBREAKERS〉を立ち上げる。2020年に、東京発ブランドとスニーカーのセレクトショップ「DAYZ」をオープンした。
Text : Momoka Oba
Photo : Takao Iwasawa
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