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KNOCK ON THE DOOR vol.3 'AKI TSUKAMOTO'

THE FRIDGE TOKYOキュレーションの元、展覧会「Psycho Cubism」が9月3日から開催される。去年ニューヨークから帰国した塚本暁宣のアトリエにて、今回のアートショーについて話を聞いた。

自分のフォーマットを壊したら、もしかしたら新しい表現になる

——何故アーティストの道に?

実は、小さい頃から絵が特別好きだったわけではなくて、ちゃんと勉強し始めたのは高校生の時なんです。当時、会社員の父親が仕事を大変そうにやっているのを見ていたので、人付き合いが苦手な自分にはサラリーマンはできないと思いました。その時に漠然と自分の技術で仕事をしていけたらいいなと思い始めました。最初はデザイナーにも興味があったんですけど、自分の中に鬱屈した感情みたいなものがあって、自由に表現できるアートをしようと思ったのが全ての始まりです。

——その中でも絵で表現することを選んだ理由は?

実は音楽が好きなんですけど、すでに兄が音楽をやっていて。同じことをしたくない気持ちが強かったんです。その時に自分らしくやれることは何かを考えた時に絵だったんです。絵って、鉛筆一本あれば始められるじゃないですか。そういう気軽さ、窓口の広さに惹かれましたね。

——アートで生計を立てていくことに対する不安はなかったんですか。


なぜかあまりなかったです(笑) 。もともとお金を稼ぐことに関心がなかったので、お金持ちじゃなくても、好きなことをやれていたらいいやという思いが強くありました。 ただ、当時若かったので売れなかったらどうしようというのが実感としてなかったので、そのまま渡米しちゃったというのはありますね。


——渡米するきっかけになった出来事はなんですか。


高校卒業後、一年間浪人して美大、大学院に行けたんです。でも、大学院を出た後、割とふらふらしていて。そんな時にある友達に出会って、彼がなぜかニューヨークに行って。なんとなく僕も行きたいなって(笑)。



——どうしてニューヨークに興味が沸いたんですか。

ニューヨークってアートのマーケットの規模が日本と全然違くて。日本に入ってくる現地の現代美術というのはほんの一部なんです。ニューヨークでしか見られない作品が本当に沢山あるんです。日本だと有名なアーティストの作品でも全然見れなかったりするんですけど、ニューヨークに行くと作品が向こうから来てくれる。行くだけで学べるところなんですよね。それで、その友達に相談したところ、彼が働いていた日本人アーティストのアシスタントとして潜り込ませてもらいました。そのまま四年間修行させてもらってたんです。





——久しぶりの日本はどうですか。


アメリカに居ると日本が恋しくなったりするんですけど、やっぱり日本に帰って来るとアメリカの方がいいじゃんみたいなところも結構あったりして。結局はないものねだりだからどこの国に行ってもそれは同じかなと思います。でも、日本は圧倒的に住みやすいし、安全だし、コミュニケーションもスムーズ。ただ、街の雰囲気がアメリカはオープンだった分、東京はパーソナルでちょっと心を閉ざしているようなところもあって、そういうところは国によって全然違うんだなと帰国して新たに感じた点です。





——今回〈Psycho Cubism〉というタイトルですが、Cubism的な画風というのはどのような経緯で始めたんですか?

全ての原型になっている最初の作品がスケッチブックにある落書きで、それを友達に見せたら「なんかこれ、すごい面白いね」って言われて。当時のスケッチは今ほどスタイルというものではなかったんですが、こういうラフなスケッチをペインティングしていくうちにいろんな引き出しが増えていって、今のようになっていったという感じです。


——何かを創り出すことに対して、どういった感情を抱きながら取り組んでいますか。


なかなか難しい質問ですね。よくものづくりって破壊と創造って言われるじゃないですか。なので、常に自分の作り上げてきたものをどっかで壊す、みたいなことは大事にしていて、意識的に取り組んでいます。こうすることで作風が突端に変わったり、全然違うことをやるきっかけになっていると思います。


——今回はこれまでと違って、ペインティングされていないスケッチがあるとお聞きしました。


確かに今までは油絵が基本でしたが、紙にパステルで描いてみたら面白そうだなと思って。最初は乗り気ではなかったんですけど、ピカソも実際にそういうことをやっていたので、とりあえずやってみました。やっぱり上手くいかなくて、なんかこれ違うなと思いながらも続けていたんです。でも、繰り返しているうちに手の動きなどが分かってきて、自分のフォーマットを壊したら、もしかしたら新しい表現になるかもしれないと気づいた時には、結構楽しくなって、今回出すことにしました。


——今回、渋谷のど真ん中にあるDAYZで展示ですが、特別な思いはありますか。



自分は美大にも通ってアーティストになった、正規ルートを歩んできたと思っています。ですが、アカデミックな部分や美術館の在り方で疑問に思っている部分があって。僕自身すごくカジュアルな場所で作品を見せたいという思いがあります。洋服やスニーカーを買いに来るようにふらっと入れる場所で、アートや作品に触れてもらう。そのような展示をしたいと思って今までやってきたので、今回渋谷のDAYZは自分にとって理想的な場所。アカデミックな世界ももちろんいいと思いますが、その枠から外れたオルタナティブな場所として求めていた空間だと感じています。

Interview & Text : Yu Yamaki
Photo : Yu Inohara

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