THE STORY OF CHAOS LAYER : YOSHIROTTEN, Kosuke Kawamura and GUCCIMAZE

惜しまれつつも今年の3月に三年間の歴史に幕を閉じた月極ギャラリー。池尻大橋から目黒に移転し、その再開をYOSHIROTTEN、河村康輔、GUCCIMAZE の三雄で彩った今回の展示『CHAOS LAYER』とは。

Photo : Gallery Tsukigime

YOSHIROTTEN

——今回のこけら落としを手掛けた経緯を教えてください。

池尻大橋にあった『月極ギャラリー』と名付けたギャラリーが今年の3月に一度閉じたんです。駐車場をギャラリースペースにしたので月極と名付けられていたんですが、それからすぐ、目黒に似たような地下駐車場が見つかり、そこでギャラリーを再開することになったそうです。その際に声をかけてもらい、こけら落としの展示を任されました。

——テーマ決めはどのように行ったんですか。

せっかくやるからにはインパクトがある展示にしたいと思ったんです。そこで僕と同じくググラフィックを制作のベースにしているGUCCIMAZEや河村康輔と三人で何かやりたいと声をかけました。でもグループ展をやっても新鮮味に欠けるので、三人で作品を作っていこうと提案し、合作にすることが決まりました。

——三人はどのように仲良くなったんですか。


康輔さんは友人をきっかけに会うようになりました。結構同じような音楽の趣味とか好きな界隈が近くて、そこから仲良くなりました。PARCOでの個展やAKIRA展でアートディレクションをやらせてもらったりと一緒に仕事もしています。GUCCIMAZEはクラブで夜な夜な会っていて、同じグラフィックデザインをやってる後輩として接していました。その後PAN magazineという雑誌で関わってもらったり。二人とも好きなものも、関わっている人も近かったので、その部分での信頼は大きかったですね。普通、自分のデータを渡すなんてことはなかなかやらないものなので、それを渡せるぐらいの信頼関係はあったのがこの三人の関係性です。

Kosuke Kawamura→GUCCIMAZE→YOSHIROTTEN

——『CHAOS LAYER』というタイトルは誰が決めたんですか。


決めたのは僕です。カオスとレイヤーという単語を入れたいという思いがありました。データをパスし合っていく過程で、レイヤーの数も増え、この混沌とした世の中の状況も含めてカオスだと思っています。今の気持ちもそうだし、社会に対してもそう。自分たちの作業で起こっていることも含めてカオスだと考えた時に、それらが混ざり合った時のタイトルとしていいなと。このタイトルだけをテーマに自由に作品作りをしていきました。

——企画がスタートしたのはいつですか。

この三人で一緒にやろうという話をしたのが4月ぐらいなので、そんなに準備期間はなかったんですよ。いきなり二人をここに連れてきて、「ここでなんかやりませんか」という話をした時の写真が今回の集合写真です(笑)。

——だから、内装も入ってない状態の写真だったんですね。もしこのパンデミックが起きてなければ、この展示が出来ることはなかったんですね。


そうですね。イベントができない、人が集まることもできない、酒も飲めない。このような制御されている世の中に僕はずっとモヤモヤしていて。だから、そういう意味では自分には何かを作ることしか出来ないなと思いました。様々なものがグチャっと入り混じったものが出せるタイミングだと思ったので、テーマ性も出さずに三人それぞれの「今」でいいかなと思って。ただ、シリアスな感じではなく、単純に来てくれた方に面白がってもらえたらいいなと思っています。

河村 康輔



——初めて『CHAOS LAYER』というタイトルを聞いた時、何を思いましたか?

二人ともプライベートで仲が良かったんですけど、ものづくりの話はしたことが今までなくて。今回、初めてPhotoshopの技術的な話をしたんです。同じPhotoshopっていうソフトを使っていても、人それぞれ使い方が違うから、プロセスの話を子供がゲームの話をするように、「どうやって攻略した?」みたいに話していたら、YOSHIROTTENから『CHAOS LAYER』という単語を提案してきたので、自然に受け入れられたような感じです。三人ともスタイルは違うけど、同業だから三人で一つの仕事をすることってなかなかできることじゃない。その中でお互いの共通項は遊んでいた過程で生まれたものだと思うから、普段仕事は一緒にしないけど、同じ空間にいて居心地がよくて、一緒に遊んでいるこのままを今回は形にしようと。本当にごちゃ混ぜでやると更に面白そうだよねってことから始まりました。

——タイトルを聞いた時からわずか3ヶ月で完成したと聞きました。

やっぱり気心が知れていないと出来なかったと思います。結果三人が三人のこと、好きなものやルーツ、得意なことなどを熟知し、且つ気を使わなくて良い関係ってことがこれだけスムーズに進んだ要因なのかなと思います。もちろん、先輩後輩はありますけど、それ以上に夜の街や遊び場で垣根がなくなっていたことが今回の作品がちゃんとカオスになった鍵だと思います。気を使うのではなく、それぞれが同じ尺度のリスペクトがある。もし、これがなかったら話は変わってきたんじゃないかなとも思いますね。信頼しきってるからこそ、自分たちはカオスにならずにカオスな作品が作れたんだと思います。

GUCCIMAZE→YOSHIROTTEN→Kosuke Kawamura

——この三人ではなかったら完成しなかったってことですよね。

このバランスが本当に良くて、自分たちでは誰がどこを作ったっていうのはもちろんわかっています。でも、どの作品も一つの作品として見た時に、いい意味で誰の作品か分からない。なのに、それぞれが「自分の作品」と胸を張って言えるものが出来上がったと思っています。そして何よりも本当にやってみて楽しかったです。この一言に尽きますね。

GUCCIMAZE




——『CHAOS LAYER』の話を初めて聞いた時の心境を教えてください。


急にYOSHIROTTENさんから連れて行きたいところがあると、何もない駐車場に連れられて、「ここがギャラリーになるから」って言われまして(笑)。それで「一発目をこの三人でやろうと言われたのがきっかけです。もともと自分が一番年下で、YOSHIROTTENさんと河村さんの二人を追っていた世代なので、まずその二人に自分も混ぜてもらえた、認めてもらえたっていうことが、純粋に嬉しかったです。その時はまだ、どんな展示にするのか漠然としていて着地点が全く見えていなかったのに、ワクワク感が先行して期待値が高まっていくのが、今まで経験したことのない感覚でした。

——今回の「それぞれのデータを次の人に渡していく」というのはどのように決めたんですか。

実は、三人でPhotoshopあるあるの話で盛り上がったのがきっかけなんです。自分はデザイン会社で働いていた期間が長かったので、納品のために話をする機会はあったんですけど、アーティスト同士でデータ作成の話をしたことがなかったので、二人の話はとても印象的でした。正攻法的なデータの作り方というものがあるにはあるんですが、二人はとんでもないデータの作り方をしていて。それが悪いということではなく、二人は感覚的にデータを触ることが良さでもあるので、そういう話を他の人とも共有できたら楽しいし、自分たちみたいな人がPhotoshopのレイヤーデータを見せ合ったら面白いよねって話になって、データをシャッフルすることになりました。

——お互いのデータを触っている時はどんな感覚なんですか。

お互いの裸を見るみたいな感覚です。特に自分は先輩二人のデータを触ることは許可されていますけど、バカ売れの二人のデータを自分なんかが触っていいのかなって。でも、おそらくそれぞれが同じことようなことは思っていたと思うんですけど、年齢的に自分が一番そう思っていたと思います。

YOSHIROTTEN→Kosuke Kawamura→GUCCIMAZE

——実際に取り組んで、いかがでしたか。

渋谷の街で飲んだり、遊んだりしていたその延長で仲良くなった三人だから、すごくやりやすくて気持ち良かったです。最初は少し肩に力が入る感じがあったんですけど、意外とスタートしたら気楽にやれました。自分が最初に着手して次に渡す時は、相手は何を思うのか考えていましたし、逆に誰かから自分にパスされる時はどんなビジュアル、どんなデータが来るのかワクワクしてました。このレイヤーは消して良いのか否かと格闘したり、レイヤーをただ上に重ねていくだけではなく、もっと深く下に持っていったり。レイヤーだからこそできることを続けていくと、入れ替えたり消したりなんだりで、もうエンドレスなんですよね。ただ、その中でも三人が無意識の中で「これはここで止めておくべきだよね」みたいなバランスは心得ていたと思います。もし他の二人とだったら、多分こうはなっていなかったのかなと思います。

——意見がぶつかったりすることもなかったと聞きました。

お互いのことを深く知っているからこそ、ぶつかりすぎることなくお互いそれぞれの進みたい道をすり抜けて、いい感じにマッシュアップされて完成したと思います。途中で「もうちょっとこうしてもいいんじゃない」みたいな会話は一切なく、本当にシンプルに、出来て次の人に渡し、受け取り、いじる。最後の人、どうぞのようなシンプルなやりとりだけでしたね。


——最後に今回の見どころを教えてください。

普段同じ場所で遊んでいるけど、ルーツはバラバラ。もしかしたら同世代だけで集まったら、こんなに気持ちよく出来なかったかもしれません。逆に言うと、今回の面白さは世代やカルチャーの消費の仕方が違うからこそ生まれたのかもしれません。いろんな種類のレイヤーの入り混じりを見てもらいたいです。これは自分が一番年下だからこそ言えることだと思います。

Interview & Text : Yu Yamaki
Photo : Yu Inohara

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