ロサンゼルスを拠点にするインディペンデントキュレーターAMADOUR氏が手掛けるグループ展「SYNTH」がGallery COMMONにて開催
2023.06.29
ロサンゼルスを拠点にするインディペンデントキュレーターAMADOUR氏が手掛けるグループ展「SYNTH」が2023年7月1日から7月30日までGallery COMMONにて開催される。本展は、ロサンゼルスを拠点にするインディペンデントキュレーターAMADOUR氏が手掛け、アーロン・ファウラー氏、アレックス・アンダーソン氏、エイプリル・ストリート氏、デヴェンドラ・バンハート氏、エリン・デズモンド氏、セイヤー・ゴメス氏の合計6名のアーティストによる作品が展示される。
「SYNTH」展では、ロサンゼルスの多様な都市景観を共に探求し、精力的に表現してきたアーティストたちを集めている。絵画、彫刻、陶器、写真を用いて南カリフォルニア州の豊かな自然の地形や都市の視覚文化、映画のようなロマン主義を展示する本展は、こうした景観を東京に紹介するような役割をもつだろう。
アーロン・ファウラー氏は、捨てられた日用品を素材に巨大な作品を制作。その作品の中心的なモチーフに「靴」がある。これは彼のアイデンティティを同定するアフリカ系アメリカの文化とヒップホップ文化において重要な意味を持つひとつのシンボルだ。今回の展示では、ヒップホップと原宿ファッションの結びつきに対するオマージュとして長さ2メートルの靴を制作したほか、原宿の近所で見つけたエル・カミーノを壁面彫刻にした。この彫刻作品は、東京で調 達した車の部品で作られ、それらをファウラー氏が実際に原宿の屋上で描いたその街の空と建物の風景画が補強している。
セイヤー・ゴメス氏とエリン・デズモンド氏は、ロサンゼルスの風景を描いてきた自分たちの作品を通じて、原宿の街並みを描いた絵画に応答しようと試みた。ゴメス氏の作品がロサンゼルスの人工的な側面に視線を向けるのに対して、デズモンド氏の写真では、裸体がカリフォルニアの夕焼けや草木をアーチ状に囲い、私たちを自然へと引き戻す。
エイプリル・ストリート氏の作品は、デズモンド氏の写真作品に続くかたちで、ロサンゼルスの牧歌的な色調と呼応しながら鮮やかな植物の生い茂る幻想的的なジャングルに私たちを引き込む。その一方、アレックス・アンダーソン氏はどちらかといえばゴメス氏の見方に近く、彼の作品にも反映されている。一見かわいらしく見える彼の陶器は、よく見ると暗いモチーフによって私たちを裏切り、大都市が提供する華やかだけれども、浅はかなライフスタイルについて考えさせられる。ベネズエラ系アメリカ人ミュージシャン兼アーティストのデヴェンドラ・バンハート氏の作品は、社会と私たち個人の関係を力強い図面で描いており、情緒的で精神的な仕方で本展の最後のピースをはめてくれる。
ロサンゼルスと原宿という二つの都市は、自由と自己表現の理想郷というステレオタイプの認識を共有しているために、文化の重要なミューズのような場所であるという独特な特徴をどちらも持っている。多くの人々が、インスピレーションを得るため、あるいは夢を追い求めるために、両都市に集まり続けている。外からの影響やインフラの変化によって両都市が変貌するなか、創造的な都市の核となるものが一体何なのかを再考することはこれまで以上に重要である。本展はアートを通じて両都市を繋げるとともに、それぞれの都市の特徴を考えるきっかけになるだろう。
Profile
AARON FOWLER / アーロン・ファウラー
1988年アメリカ、ミズーリ州セントルイス生まれ。ロサンゼルスとセントルイスを拠点に活動。ファウラーの巨大な絵画、彫刻、インスタレーションは、廃棄された日用品から作られ、自分自身や愛する人の人生に起きて欲しい出来事や行動を描いている。また、「N2EXISTENCE」という地元のアートを支援する地域一体型のプロジェクトも運営している。 作品はこれまでハマー美術館(ロサンゼルス)、ニュー・ミュージアム(ニューヨーク)、Saatchi Gallery (ロンドン)、Salon 94 (ニューヨーク)などで発表している。
ALEX ANDERSON / アレックス・アンダーソン
1990年アメリカ、ワシントン州シアトル生まれ。ロサンゼルス在住。日系・アフリカ系アメリカ人であり、そしてゲイのアイデンティティを持つアンダーソンは、アメリカにおけるアイデンティティ・ポリティクスやセクシュアリティの問題も意識しながら陶芸作品を制作している。バロック美術や日本のポップアート、現在流行っているファッションやデザインからの影響がみられ、一見すると遊び心に溢れる作品は、西洋社会が非西洋圏文化やマイノリティ文化に向ける眼差しに対して根本的な問いを投げかける。アンダーソンは、中国の景徳鎮にある景徳鎮陶芸大学で学び、杭州の中国美術アカデミーとの提携でフルブライト奨学金を授与された。彼の作品は、ロング・ビーチ美術館とアメリカン・ミュージアム・オブ・セラミック・アートで展示されている。
APRIL STREET / エイプリル・ストリート
1975年アメリカ、バージニア州生まれ。ロサンゼルス在住。ブロンズ鋳造を中央イタリアで、絵画をシカゴ芸術学院で学ぶ。ストリートは素材による実験を通じて、冒険や神話というテーマを思考し、さらには、第二波フェミニズムや17世紀オランダの静物画といった歴史的運動を参照して制作を行っている。最近の展覧会では、サンタ・バーバラ美術館(アメリカ)、Various Small Fires(ロサンゼルス)、The Underground Museum(ロサンゼルス)などがある。
DEVENDRA BANHART / デヴェンドラ・バンハート
1980年アメリカ、テキサス州ヒューストン生まれ。ロサンゼルス在住。バンハートは、2000年代の「フリーク・フォーク」 と「ニュー・ウィアード・アメリカ」という音楽史のムーブメントの先駆者としてもっとも知られている著名なミュージシャンであるが、その音楽的追求の傍らで、ペインティングやドローイングも行ってきた。これまで、MoMA(ニューヨーク)、 MoCA(ロサンゼルス)、ハマー美術館(ロサンゼルス)、LACMA(ロサンゼルス)、The Broad Museum(ロサンゼルス)などで公演を行っている。
ERIN DESMOND / エリン・デズモンド
1985年生まれ。ロサンゼルスを拠点に活動。写真、彫刻、インスタレーション、パフォーマンス、ソマティック・ヒーリング(SE療法)の方法論を用いて、女性性の治癒、接続、回復をもたらすような体験を創り出す。UCLAで学士号、イェールで修士号を取得後、非営利団体Somatic Experiencing Internationalでさらに研究を重ねる。これまでフラッグ・アート財団(ニューヨーク)、Diane Rosenstein Gallery(ロサンゼルス)、Barcú(ボゴタ、コロンビア)などで作品を発表している。
SAYRE GOMEZ / セイヤー・ゴメス
1982年アメリカ、イリノイ州シカゴ生まれ。ロサンゼルス在住。ゴメスの絵画や彫刻、そして映像作品は、ハリウッドの背景幕や商業的な看板、自動車の塗装などを参照し、主にロサンゼルスという都市を舞台にしたり主題にしたりすることで、知覚と表象をめぐる問いを投げかける。シカゴ美術館附属美術大学で美術学士号、カリフォルニア芸術大学で修士号を取得。作品はこれまで、LACMA (ロサンゼルス)、ハマー美術館(ロサンゼルス)、ルーベル・ファミリー・コレクション(マイアミ)の常設展示で発表されている。
AMADOUR / アマドール
1995年アメリカ、ネバダ州スパークス生まれ。ロサンゼルスとニューヨークを拠点に活動。絵画、音楽、彫刻、パフォーマンスを手がけるインディペンデント・キュレーター、アーティスト、ライター、そしてミュージシャンでもある。 雑誌『Frieze』『The Brooklyn Rail』『Cultured Magazine』のライターとして、ジョージ・コンド、ウィリアム・ケントリッジ、ジュリアン・レノンなどのアーティストにインタビューを行ってきた。ミュージシャンとしては、デビューEP『Western Movie Dream』を最近リリースし、評価を受けている。2018年にUCLAの芸術&建築学部で舞台美術と美術史の学士号を同時に取得。国際美術評論家協会(AICA)のメンバーでもある。
Event
SYNTH
開催期間
2023年7月1日(土)~7月30日(日) 12:00-19:00 (水~日) 休廊:月、火
開催場所
Gallery COMMON
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-39-6 B1F
Web
Instagram
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