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沖縄出身アーティスト多和田真人による東京初の個展「SPACE OUT」がSAIにて開催

美しく、崇高でどこか幻覚的でもある抽象画を描き続ける沖縄出身のアーティスト多和田真人の個展が2月23日から3月12日までSAIにて開催される。



多和田氏は1990年頃に創作活動を開始、以来30年間一度も沖縄を離れることなく制作を続けてきた。東京はもちろん県外初となる本個展では、昨年から今年にかけて制作された新作の他、多和田氏が10年以上前に制作し自宅の倉庫で保管されていた作品で構成される。



1967年、沖縄で生まれた多和田氏の脳裏には、日本に返還される前の情景、そして70年代 80 年代と急速に移り変わりゆく返還後の沖縄の光景が鮮烈に、そして幻想的に焼き付いている。そのような環境で過ごした多和田氏の思考の根底には、全ての事物は一つではなく、時間や空間、事象が変われば対象も変わる。という考えがある。



「画家にとって絵を描くという行為は、描いているのか、それとも描かされているのか、この両方の視点から考えることができるのではないだろうか。」



人の目では認識できないこと、言葉にできない事、人間が主体の考え方では到底説明のつかないことがこの世の中には幾多もあり、多和田氏にとっての制作とはそういった事実を確かめる手段であり、自己にある未知を見つけ出していく行為なのだそう。



自分が真に心地よいと感じる瞬間、筆からパレットナイフに持ち替えたときに動く心情、額を作る退屈な行為、そしてその額がどのように絵画に作用していくのかなど、そういった一つ一つの心情に耳を傾けながら生み出された作品は、それぞれが個性を持ち作家自身を超えた存在として昇華。



「何でもいいから造りたい。何かを作っていると楽しい。何かを作りたいとある日ふと思って、出来のイイ悪いではなく、何かを造り始めると生きているという実感が持てるからです。自分の為に作っていると思います。」多和田氏は語る。



沖縄で一人黙々と制作を続けてきた多和田真人。彼の作品を東京・渋谷という場所で展示することで新たにどのような変化が起きるのか、是非足を運んでみてほしい。



"戦後開発と公共工事によって沖縄の至るところに塗りたくられたアスファルト。その上で、深夜のほとんど同じ時刻の同じ酒場に、どこからともなくゆらゆらと立ち現れてくる影。その輪郭や濃度から、光源は不思議と、しかし確かに、人工的に施され、いくつも増幅させられる街灯のものではなく、自然が生み出すたったひとつの、澄明なものであることが感じられる。漂う軽やかさと濃密な重さを併せ持っているその影は、その人物像、その口から発せられる言葉、作品、全てにズレがなく重なっている。 地方では本来のアカデミックなアートは成立しないといわれるなかで、そういう沖縄に限って、作品の力を差し置いた政治的プレゼンスが優先され、それに則したヒエラルキーが根強くある。そして、社会的状況が切実であるほどに、その頂点は不変性よりも即時的なものとなってしまう。そこに意味を見出したものは、そうではないものを端に追いやり、そこから外れたものはアウトサイダーとなるだろうが、多和田は高度な知性と精神力を持ち、確信的な意思で、その淵ギリギリのところで戯れるように耐え続けている。 年齢から見えてくる時代背景や、ライフスタイルから読み取ることができる沖縄のストリート、アンダーグラウンドカルチャーのど真ん中、MAD最前線。掴み所なく、ひょうひょうとした表情の多和田を取り巻いてきた環境が、キャンバスからはみ出た油絵の具のように、外の地の影響を受けながらも、そのあらゆる文化には収まりきれない、アスファルトのように重く混沌としたものであることは想像しにくくない。社会の淵、政治的墓石、その上に立ち現れる影として、それらを超越する人間の知的感性を多和田の作品から感じるのだ。"

ー 写真家・石川竜一

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