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Gallery Commonで5月5日までシュー・ブラント氏の日本初の個展「little puddles」が開催中


Gallery Commonで4月6日から5月5日まで、アメリカ人アーティストのマシュー・ブラント氏の日本で初めての個展「little puddles」(小さな水たまりたち)を開催する。

1982年ロサンゼルス生まれのマシュー・ブラント氏は、予想だにしない素材や技法を取り入れた実験的な写真作品を提示し、写真とは「光沢紙に整然とイメージが印刷されたものである」という固定観念を覆す。例えば、「Lakes and Reservoirs」シリーズでは湖の写真をその湖の水を使って現像し、「Wai’anae」シリーズではハワイの風景が写った写真を地中に埋め、自然に起きる浸食によって島の痕跡を刻み込んだ。こうしたブラント氏の作品は、時間的な瞬間を捉えるものであるという写真の限界に挑んでいるとも言えるだろう。


写真を「難解な錬金術」とするブラント氏は、その拡張性を示したいという欲求に突き動かされ、新しいシリーズに取り掛かる度に新たな素材や技法に挑んでいる。本展示「little puddles」では、複数のシリーズの作品を通じてブラント氏のそうした「流動的」な活動を映し出す。インクの染み、貯水池の水、溶融ガラス、銀液などの液体によって制作された本展の展示作品は物理的な意味でも「流動的」であり、また私たちが住む世界を「大きな水域」に喩えると、そこから現れた「水たまり」としての作品は概念的な意味でも「流動的」だ。


ブラント氏にとって作品を作ることは、自身の内側を巡る旅であると同時に、その外の世界を理解するための手段でもある。どうすればある対象を真に描き出すことができるのか?その方法を示すために、描写するその対象自体から作品を作り出し、そしてその素材の真価に迫ろうとしている。また、写真の本質に実験性を見出しているブラント氏の作品は、テクノロジーに何ができるかを示しているとも言える。テクノロジーは私たちの知覚を反映しているものであり、ブラント氏は新たな技法に挑むことで私たちの新たな知覚様式にも挑んでいるのだ。


今回の展示では、複数のシリーズから作品をピックアップ。「Heidelberg Blankets」シリーズからは、4点の作品が展示。シリーズ名はハイデルベルク社の大型印刷機のクリーニングに使用されるブランケットから来ている。「Rooms」シリーズでは印刷技術の限界に挑戦し、それを周囲の環境へのアプローチに用いている。ブラント氏は近年開発されたガラス顔料技術を利用し、かつて誰かの家に吊られていたシャンデリアを写真作品に昇華させる。そのシャンデリアが下がっていた部屋の360度画像をクリスタルそれぞれに吹き付け、以前の持ち主が過ごした記憶を写し出している。「Silver」シリーズは、カリフォルニア、インドネシア、マダガスカルの森林を写した写真に銀液を垂らすことで写真を鏡面に転換し、森林と鑑賞者が併存する空間を作り上げている一方、やはり自然が描かれている「Carbon」シリーズでは、アルマイト処理された金色のアルミニウムの支持体の上に、カリフォルニアの森林火災で焼けた木が顔料として使用されている。


荒れ果てた木々を取り囲む明るい空白は、火事によって失われていった森林のことを鑑賞者に想起させる。「Joshua Tree」シリーズでは、写真の撮影場所で採集した砂によってシルクスクリーン「印刷」を行っている。ジョシュア・ツリーはロサンゼルスのジョシュア・ツリー国立公園に生える象徴的な木で、文化的・精神的にも生命力のシンボルとなっている。砂によって幻想的に描かれた、視覚的にも物質的にもうつろう作品の上でも、ジョシュア・ツリーはまるで地球のものではないようなその不思議な存在感を発し続けている。

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